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【ライブレポート】nonLinear Metal DynamiX - EXTRA Vol.4 in CLUB CITTA'

nonLinear Metal DynamiX EXTRA Vol.4
・2017年5月14日(日)
・川崎 CLUB CITTA'

記念撮影
ダイジェスト映像
by TEAM A'THARSH 

前回 Vol.3 から半年、今回も次代の旗手を虎視眈々と狙う気鋭の 8 バンドが終結した。「ライブハウス」とは違う CLUB CITTA’ の大舞台で繰り広げられた競演の模様をお届けする。

1. ESTRELLA
開幕の火蓋を快速チューンの連発で叩き切って落としたのがESTRELLAだ。
スペイン語で「星」の名を冠したこのバンドは、この日のステージを全曲ファストチューンで構成し、自身が悠久に輝く星ではなく、瞬く間に輝きを燃やし尽くさんとする彗星の様な存在であることをオーディエンスに訴えかけた。
サウンド面ではギターを中心とした正統派メロディックパワーメタルで、SHION(Vo) の伸びやかなボーカルといかにも楽し気な表情のステージングが会場に華を添えた。テンポの速い曲でのステージでありながら、演奏はまとまっており、王道かつドラマティックな楽曲展開で、フロアからのリアクションも上々であった。彼らが何をしようとしているのかを提示することはできていたように思われる。
ただ、まだ隠しているものが相当ありそうな気配だ。今夏に予定されているという東名阪のツアーを経て、その後想定されるまとまった音源リリースに際しては、いまだ明るみになっていない底力を発揮してハイクオリティな作品を繰り出して来るのではないかと期待する。

2 . 黒薔薇王国
拳とメロイックサインがばかりが幅を利かせる HR/HM シーンにおいて、敢然と「挙手」の反旗を翻したのが、前代未聞の反逆メタル国家「黒薔薇王国」だ。 
展開するサウンドは王道 HR/HM で、演奏は非常に安定感があり、このシーンのファンならばあとは好みが左右するだけだが、ライブステージを見てしまえば細かい好みがどうのということも吹き飛んでしまう。。随所に散りばめられたテクニカルなフレーズを難なくこなし、その上でのコミカルなステージングと「挙手」の嵐である。これは目を注がずにはいられない。 
コミカルさとキメるところはキメる視覚的な対比、テクニカルさだけを前面に押し出すことがないあくまで楽曲メインの演奏、という点では ”SEX MACHINEGUNS” や “THE 冠” にも通じる高度なエンターテイメント性を有する稀有な存在だと言える。 
今回はわずか 4 曲ながら軽妙なトークも重要な要素と位置づけ、飽きの来ない30 分のステージであったが、曲ももっと聴きたい!と思わせるに十分な内容であった。彼らには既にロングステージが必要だ。現在夏のリリースに向けてレコーディング中ということであり、今後の音源展開も楽しみだ。また、今回初見のオーディエンスが大半でありながら最終的にはフロアの全員に「挙手」せしめたライブの進化にも要注目だ。王国の未来に栄光あれ!挙手!!

3. リリックホリック歌劇団
今年 2 月の新宿 ReNY での LOUD exSTAGE - ULTIMATE Vol.2 in ReNY以来の大舞台参戦となる「ビジュアル系ロックアイドル」が三番手に登場。前回彼女らについてレポートを書いた際、「バンド編成でのライブも是非見てみたい」という感想であったので、筆者としては願ったり叶ったりである。
結論を先に言うと、「ビジュアル系ロックアイドル」の触れ込み通りならば、バンド編成が常態化しても悪くはないと思われた。3 ヶ月前の彼女らのステージと何が違うかと言えば、バンドのライブ演奏が繰り出す、オケとは比較にならない楽曲の緊張感と抒情感の高まり、フロアへの情報量の増大だろう。ロック方面のオーディエンスもカワイイ出演者はもちろん嫌いではないが、かと言ってそれだけを求めているわけではない。そういう意味では、今回の優秀な演奏陣を従えて「音のローカライズ」を経た上での異ジャンルへの参入は「アリ」ではないだろうか。
しかし、今回最も言及せねばならないのは、彼女ら自身のステージの消化ぶりだ。3 ヶ月前とは立ち姿からして既に違う。動きのキレが違う。まとう空気感がすでに前回のステージとは別人のものになっていた。この成長度合い、変貌ぶりにはある種驚きを覚えた。この調子でさらに成長を遂げ、ロックシーン、アイドルシーン両方を自在に行き来できる存在になってもらいたい。

4. Heaven’s Tragedy
バンド名からも推察できるように王道メロパワ、ネオクラ路線のバンドだ。パイプオルガンのオープニング SE で始まり、ギターを中心としたアンサンブルをYAMA-B を彷彿とさせるパワフルなボーカルがリードするスタイルだ。 
タイトなドラマーを中心にまとまったライブ演奏で、安定感はあるのだが、あえて希望を言うのであれば、「ライブならでは」というようなステージからの熱量が欲しいところではあった。またキーボードの音が前に出てくるような仕掛けができると、楽曲の華やかさがより前面に押し出され、フロアへの訴求力がさらに増大するのではないかと思われた。 
とはいえ、オーディエンスの反応は悪くなく、ステージとのコミュニケーションも円滑であった。今後はしばらく音源制作に注力するとのことなので、ライブでの露出はそれほど多くはならないようだ。既に正統派好きには納得のサウンドであり、個々の演奏技術は高いものがある。音源制作を経てバンドサウンドがさらに固まるであろうから、その暁にはさらに飛躍した姿を見せてくれることだろう。 

5. Leopardeath
札幌から来襲した紅一点 purple (Vo.) を擁するバンドだ。幕が上がった瞬間から最前部のオーディエンスから叫び声が上がったことからもわかるように、遠く北海道のバンドでありながら既に前評判は高く、果たしてその実態は、それ以上であることを自ら証明してみせた。 
北欧直系のモダンエクストリームのギターサウンドと日本語詞のクリーンボーカルのメロディ、さらに Masayoshi (Gt./Vo.) のスクリームが絶妙に絡み合い、圧倒的な存在感を見せつけた。ボーカル以外はそれほど派手さはないステージングながら、各パートがそれぞれの役割を高いレベルできっちりとこなしていることが感じられた。結果、分厚い音の塊が一つの有機的なバンドサウンドとなって、フロアを包み込んでいた。派手なステージングでなくてもスケール感のあるステージはできる、ということをそのパフォーマンスで実証した形だ。 
今まで幾多のバンドが北欧系ハイゲインサウンドと日本語の歌メロとの融合に挑戦してきたが、このレベルで実現したバンドがいただろうかと驚嘆を禁じ得ない。現在次作アルバムを制作中とのことなので、そのリリースと完成度に否が応でも期待が高まるところだ。北の猛獣が日本全国そして世界を疾駆する日は、そう遠いことではないだろう。 

6. LAST MAY JAGUAR
LAST MAY JAGUAR は、2 月の LOUD exSTAGE - ULTIMATE Vol.2 in ReNY でギタリストが脱退し、約束通りこの日から「第二章」を開始させた。
 今回のライブステージではサポートギタリストを迎えてのものであったが、その音楽的なスタイルはいささかもブレることがなかった。 
yurica の「ライブがしたくて仕方がなかった」の言葉通り、ヘヴィロックを核に J-ROCK をまとい、親しみやすい楽曲と統率力のあるステージで、視覚聴覚両面でオーディエンスに訴えかけた全身をさらけ出し、そして振り絞るように歌う yurica の姿からは、流行り廃りに流されることなく、タフなロックバンドでありたいという芯の強さと、逆境にあっても前進することを止めない意志の強さが伺えた。この悲壮感とは異なるヒリヒリするような体の奥底からの叫び声を上げ続けることで、ふとしたことをきっかけに羽化が始まる日が、実はそう遠い日ではなく、来るように思われた。 
目指す地平はいまだ彼方にあっても、そこまでたどり着く強さが彼らにはある。 
彼らの背後にそんな希望を見たステージだった。

7. CROSS VEIN
いよいよ名実ともに日本のシンフォニックメタルシーンの一翼を担うバンドの出番だ。昨年は JULIA (Vo.) の体調不良により一時ライブを鎮静化させていたこともあったが、それにより一層充実度を増してシーンに返り咲いた感がある。 
この規模とキャリアのバンドともなれば、広い CLUB CITTA' のステージもお手のものだ。ステージに姿を見せると、あっという間に会場の空気をつかみ、瑞々しくもゴージャスなメタルサウンドで終始魅了し続けた。 
彼らのサウンドの美点は、微に入り細を穿ったような丁寧な処理だ。スピード感のあふれる楽曲が多く、個々の演奏陣も音数が多いアンサンブルでありながら、とにかく音の端々まで一音々々丁寧に演奏しきる。それにより繊細に構築されたアンサンブルは、その透明感を微塵も失うことなく空間に注ぎ込まれていくのだ。 
他方それでいて JULIA を含むステージ上の全員が常にフロアへのアピールをし続ける。ことに JULIA は動きの制限されそうなロングドレスをまとっているが、視覚的にも決してワンパターンになることなく、徹頭徹尾優雅なステージングでその美声とともにフロアの隅々まで魅了した。一方、男性陣に目を向けても、それぞれに視覚的な見どころがあり、どこを切り取っても非常に充実した快演で、サウンドとビジュアルが高いレベルでかみ合った、質の高いライブエンターテイメントだったということができる。

7. BELLFAST
この日の大トリBELLFAST は、結成が 1993 年というから、既に四半世紀になんなんとするキャリアを誇る。バイオリンとフルートを加えた七人編成でのステージは、それを実証するタイトで重厚なアンサンブルであった。
日本では数少ないどころかアジアでも稀有な、アイリッシュ、ケルティック、フォーク、バイキングメタルのテイストをフィーチャーしたそのサウンドは、エキゾチックでありながらどこか懐かしい香りを漂わせ、空間を共有するオーディエンスに不思議なノスタルジーを思いおこさせる。
彼らのライブについて、一言で言うなら「参加したもん勝ち」である。ショウマンシップにあふれた KOH NISHINO (Vo.) は、ステージの隅々まで歩き回り、会場の一人一人とコミュニケーションを図っていく。その男くさいフレンドリーさが導くはるかなアイルランドは、飲み物片手に一緒に歌って踊って飛び跳ねて、そんなひたすらに楽しいところなのだと思わせてくれる。そんな場所があるのなら、一緒に行かない手はない。曲を知っている・知らないに関係なく、HR/HM のプリミティブな楽しさを思い出させてくれる素晴らしいショウだったことは、終演後に残ったオーディエンスの笑顔が証明していた。
2nd アルバムの制作が佳境に入っており、その楽曲はこの日すでに演奏されたが、リリースも「間もなく」とのことなので、この陽気な男たちの次なる旋律に期待しよう。

  Report by JUN (ex.XECSNOIN)

■プロフィール
【JUN】 ヘヴィメタルバンド XECSNOIN (ゼクスノイン) のベーシストとして 2001 年から音楽シーンに参入する。現在は Sirent Screem、MaKORN にて活動中。00 年代後半より SNS 上でで個人名義でコラム執筆を開始。2015 年から、物書きを本格的に始める。在独経験を基にした独自の観点で、音楽はもとより、比較文化論から政治経済に至るまで多岐にわたり論評を展開中。その独特のわかりやすさ重視の文体が好評を博している。趣味はモータースポーツ在宅観戦。 
 
※個人ブログ  ⇒ 『長文御免』